ブログを更新していなかった時期に様々な外来生物のニュースがありましたね。
そのなかで興味深かったものを、今後記事にしよう!と思って溜めてありました。
それを放出していきます。
少し前の話も出てくると思いますが、お付き合いくださいませ。
今日は5月初めに報道された、セアカゴケグモの天敵の話です。
外来生物が蔓延するのは、一般的に侵入した地域で天敵となるものがいないor少ないから、ということもできます。では今回発見された天敵は果たしてセアカゴケグモの蔓延に歯止めをかけることができるのでしょうか。
では、ニュースです。↓
セアカゴケグモの"天敵"ハチ発見 針で一刺し、麻痺させて捕食
5月7日14時7分配信 産経新聞
強い毒性を持つセアカゴケグモに、国内では存在しないとされてきた捕食者がいることが7日、大阪市立自然史博物館の調査で分かった。一方で、大阪府内で昨年度、セアカゴケグモによる被害例が過去最多を記録したことが判明。繁殖を繰り返す毒グモの"天敵"が発見されたことで、関係者は被害拡大が防げるのではと期待している。
同館学芸員の松本吏樹郎さんと同館友の会会員の北口繁和さんの調査によると、クモバチ(ベッコウバチ)の一種の「マエアカクモバチ」が、セアカゴケグモを捕食していることが確認された。平成19年9月に長居公園(大阪市東住吉区)で初めて確認されてからは、この数年間に、堺市堺区内や大阪府豊中市内の石垣のすき間や公園の地面などでも、このハチが針で� �して麻痺させたセアカゴケクモをアゴでくわえ引きずっている姿が観察されたという。
遺伝物質は、爬虫類に渡さ方法
このハチは背中が赤さび色をしている点が特徴。これまで別のクモ(ハンゲツオスナキグモなど)を捕食する姿は観察されていたが、松本さんは「えさのクモと似た環境で増加し、入手しやすくなったセアカゴケグモを捕食し始めたのでしょう」と説明する。
外来種であるセアカゴケグモは日本では平成7年、大阪府高石市で初めて発見。その後、兵庫や和歌山、奈良など近畿地方を中心に繁殖を繰り返しており、愛知や群馬などでも確認されるなど生息範囲が北上している。
大阪府環境衛生課によると、セアカゴケグモによる府への被害報告は、13、16、17年度にはそれぞれ1件だったのが、18、19年度にそれぞれ6件。20年度� ��は9件と最多を記録、「ここ数年で被害例が増加しており、今年は予断を許さない状況だ」という。
同課では定期的に生息状況を調査をしているが、「クモは一カ所に固まっているわけではないので、一斉駆除は不可能だ」と頭を悩ませていた。思わぬ天敵の発見に「生態系への影響を考えなければいけないが、面白い発見だと思う」と期待感を示している。
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■首都大学東京の清水晃助教(生物多様性)の話
「マエアカクモバチは国内でも比較的まれなハチで、生態があまりよく知られていない。毒グモの駆除に使えるほど増殖させることができるか疑問の余地があるが、いい意味での影響が期待できるだろう」
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【用語解説】セアカゴケグモ
鳥は住環境のために何をすればよい
オーストラリアや東南アジアなどの熱帯、亜熱帯に生息。船の貨物などとともに日本に入ってきたとみられる。オスは体長約3ミリ、メスは体長約15ミリ。メスは背面に赤またはオレンジ色の帯状の模様がある。神経毒をもち、かまれた部分が腫れ、痛みが次第に広がる。呼吸困難など全身症状が表れることがあり、海外では死亡例もある。
ということでした。
マエアカクモバチがセアカゴケグモを食べることが発見されたそうですが、マエアカクモバチを天敵として導入したとして、果たしてどれだけの効果があるのでしょう。
まだ生態もよくわかっておらず、おそらく今後も人工飼育し増殖して放虫ということもありえないと思いま� �が、天敵導入ということについてちょっと考えてみましょうか。
天敵導入はこれまで農業で幅広く行われてきました。また現在でも天敵を導入する方法はとられております。
野菜を作るにあたって農薬を用いたくない場合は、害虫から守るために天敵を導入しなければなりませんね。これは経済効果を高めるために必要なことです。
また、生態系の分野でも天敵導入が行われたことがあります。
正確には生態系保全ではなく、被害防止の観点ですが、沖縄のハブに対してマングースを導入したのも天敵導入の例ですよね。
天敵導入の構図は非常に単純です。
ある生き物Aが被害をもたらしていた。
ならばその被害を防ぐために、Aを食べる生き物Bを入れて、食べてもらえばいいんだ!
よし!Bを入れ� ��う!
これで被害がなくなるだろう!
と、皆様考えて導入を果たすわけです。
さてさて、それで成功した例はいったい何件でしょうか。
ヒトではどのように多くの蛋白質である
農業の天敵導入でも、この構図のように簡単にいった件は少ないと思います。
他は、例えば天敵が定着しなかったり、はたまたマングースのように他の生き物を食べてしまい、別の生き物に被害を拡大させたり・・・。
天敵導入は、多くが外来生物を使っておりました。もちろん国外もあれば、地域外もありますが。
そして、天敵の食性も深く考えずに導入していました。
だから、予期せぬ結果が出ていたのです。
まぁ、当たり前といえば当たり前の話です。
さっきの例で当てはめるなら、生き物BはAを好んで食べていたのでしょうか?
単純にAの量が多く、比較的捕まえやすいからAを食べていたのではないでしょうか。
動物の嗜好性なんてものは測ることができません。哺乳類になれば個性というものが出てくるでしょう。昆虫だって、今回のハチで例えるならば、ある容器にハチと多くのいろんなクモを入れて、どれを一番最初に襲ったかを何十回と繰り返し実験し、そこでかなりの割合で特定のクモを襲わなければ嗜好しているとはいえないのです。
そう、ただ食べたor食べないだけでは、天敵とは言い切れないのです。
我々が他に食べるものがなく、仕方なく道端の雑草を食べたとしましょう。
果たして我々は雑草の天敵ですか?そういうことです。
記事にもあるとおり、今回このハチが発見されたのは「えさのクモと似た環境で増加し、入手しやすくなったセアカゴケグモを捕食し始めた」というだけに過ぎないと思います。
< p>だから、安易にこのマエアカクモバチを繁殖導入し、セアカゴケグモを駆除してもらおうなんて甘い考えは捨てなければなりません。マエアカクモバチが益虫である他のクモを駆逐しないとも言い切れないのですから。
セアカゴケグモを食べることが確認されたのは、非常に勇気付けられるニュースです。
私も、おおっ!ついに現れたか!と感じたほどです。
生態系保全の世界では、最近、外来生物に対して現地の天敵を用いることが注目されつつあります。
例えば、中国では日本から侵入したクズに対して、現地でのクズ害虫などを探し、防除させようとしております。
外国の生物を使って天敵導入するよりは多様性の保全上はるかに洗練された手法と言えるでしょう。
しかし、忘れてはならないのは生態系は人間が考えるよりも多様で複雑なもの。
安易に手を加えても予想通りの結果が出ることは少ないのです。
日本のマエアカクモバチが外来のセアカゴケグモを食べること� �非常に興味深いニュースです。
ですが、安易に導入なんてことを考えず、この情報をどのように活用してセアカゴケグモの防除に役立てるのか、それが我々生態系保全研究者の使命といえるのではないでしょうか。
引用元:産経新聞/yahoo!ニュース 2009/05/07 『セアカゴケグモの"天敵"ハチ発見 針で一刺し、麻痺させて捕食』
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